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2012年10月13日 (土)

正道に戻すためには

   

    もともと学者も政治家も間違った道に踏み行った。何処でこういうことが起こったというと、正論はここしかないのである。彼等は皆錯覚を起こしている。
    だからマスコミの中には正しいと言うことはあっても、正論はないのである、日本人は約千五百年間の歴史の間に政争や戦争に巻き込まれて、試行錯誤の結果、戦争のない国(徳川時代)を造ったのである。
    そして二百五十年の間戦争がなかった、しかるに、日本は歴史もないアメリカの民主主義という間違った道を選んだのである。
    確かに発祥の時は、確かに正道であった、だからワシントンやリ-カンは優れていた、選挙民も正道であった。しかしもともと幼稚な歴史のない国の思想は戦争しないと、金が儲からないと、正道の思想の大統領まで、企業と提携した大統領が殺したのである。
   

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政治」カテゴリの記事

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 ある日の暮方の事である。一人の下人
げにん
が、羅生門
らしょうもん
の下で雨やみを待っていた。
 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗
にぬり
の剥

げた、大きな円柱
まるばしら
に、蟋蟀
きりぎりす
が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路
すざくおおじ
にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠
いちめがさ
や揉烏帽子
もみえぼし
が、もう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない。
 何故かと云うと、この二三年、京都には、地震とか辻風
つじかぜ
とか火事とか饑饉とか云う災
わざわい
がつづいて起った。そこで洛中
らくちゅう
のさびれ方は一通りではない。旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その丹

がついたり、金銀の箔
はく
がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、薪
たきぎ
の料
しろ
に売っていたと云う事である。洛中がその始末であるから、羅生門の修理などは、元より誰も捨てて顧る者がなかった。するとその荒れ果てたのをよい事にして、狐狸
こり
が棲

む。盗人
ぬすびと
が棲む。とうとうしまいには、引取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くと云う習慣さえ出来た。そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を悪るがって、この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。
 その代りまた鴉
からす
がどこからか、たくさん集って来た。昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾
しび
のまわりを啼きながら、飛びまわっている。ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻
ごま
をまいたようにはっきり見えた。鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄
ついば
みに来るのである。――もっとも今日は、刻限
こくげん
が遅いせいか、一羽も見えない。ただ、所々、崩れかかった、そうしてその崩れ目に長い草のはえた石段の上に、鴉の糞
ふん
が、点々と白くこびりついているのが見える。下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖
あお
の尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰
にきび
を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。
 作者はさっき、「下人が雨やみを待っていた」と書いた。しかし、下人は雨がやんでも、格別どうしようと云う当てはない。ふだんなら、勿論、主人の家へ帰る可き筈である。所がその主人からは、四五日前に暇を出された。前にも書いたように、当時京都の町は一通りならず衰微
すいび
していた。今この下人が、永年、使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの衰微の小さな余波にほかならない。だから「下人が雨やみを待っていた」と云うよりも「雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」と云う方が、適当である。その上、今日の空模様も少からず、この平安朝の下人の Sentimentalisme に影響した。申
さる
の刻
こく

さが
りからふり出した雨は、いまだに上るけしきがない。そこで、下人は、何をおいても差当り明日
あす
の暮しをどうにかしようとして――云わばどうにもならない事を、どうにかしようとして、とりとめもない考えをたどりながら、さっきから朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなく聞いていたのである。
 雨は、羅生門をつつんで、遠くから、ざあっと云う音をあつめて来る。夕闇は次第に空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜につき出した甍
いらか
の先に、重たくうす暗い雲を支えている。
 どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑
いとま
はない。選んでいれば、築土
ついじ
の下か、道ばたの土の上で、饑死
うえじに
をするばかりである。そうして、この門の上へ持って来て、犬のように棄てられてしまうばかりである。選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を低徊
ていかい
した揚句
あげく
に、やっとこの局所へ逢着
ほうちゃく
した。しかしこの「すれば」は、いつまでたっても、結局「すれば」であった。下人は、手段を選ばないという事を肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、その後に来る可き「盗人
ぬすびと
になるよりほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。
 下人は、大きな嚔
くさめ
をして、それから、大儀
たいぎ
そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう火桶
ひおけ
が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。丹塗
にぬり
の柱にとまっていた蟋蟀
きりぎりす
も、もうどこかへ行ってしまった。
 下人は、頸
くび
をちぢめながら、山吹
やまぶき
の汗袗
かざみ
に重ねた、紺の襖
あお
の肩を高くして門のまわりを見まわした。雨風の患
うれえ
のない、人目にかかる惧
おそれ
のない、一晩楽にねられそうな所があれば、そこでともかくも、夜を明かそうと思ったからである。すると、幸い門の上の楼へ上る、幅の広い、これも丹を塗った梯子
はしご
が眼についた。上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。下人はそこで、腰にさげた聖柄
ひじりづか
の太刀
たち
が鞘走
さやばし
らないように気をつけながら、藁草履
わらぞうり
をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた。
 それから、何分かの後である。羅生門の楼の上へ出る、幅の広い梯子の中段に、一人の男が、猫のように身をちぢめて、息を殺しながら、上の容子
ようす
を窺っていた。楼の上からさす火の光が、かすかに、その男の右の頬をぬらしている。短い鬚の中に、赤く膿
うみ
を持った面皰
にきび
のある頬である。下人は、始めから、この上にいる者は、死人ばかりだと高を括
くく
っていた。それが、梯子を二三段上って見ると、上では誰か火をとぼして、しかもその火をそこここと動かしているらしい。これは、その濁った、黄いろい光が、隅々に蜘蛛
くも
の巣をかけた天井裏に、揺れながら映ったので、すぐにそれと知れたのである。この雨の夜に、この羅生門の上で、火をともしているからは、どうせただの者ではない。
 下人は、守宮
やもり
のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。そうして体を出来るだけ、平
たいら
にしながら、頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、楼の内を覗
のぞ
いて見た。
 見ると、楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸
しがい
が、無造作に棄ててあるが、火の光の及ぶ範囲が、思ったより狭いので、数は幾つともわからない。ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に裸の死骸と、着物を着た死骸とがあるという事である。勿論、中には女も男もまじっているらしい。そうして、その死骸は皆、それが、かつて、生きていた人間だと云う事実さえ疑われるほど、土を捏

ねて造った人形のように、口を開

いたり手を延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。しかも、肩とか胸とかの高くなっている部分に、ぼんやりした火の光をうけて、低くなっている部分の影を一層暗くしながら、永久に唖
おし
の如く黙っていた。
 下人
げにん
は、それらの死骸の腐爛
ふらん
した臭気に思わず、鼻を掩
おお
った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ。
 下人の眼は、その時、はじめてその死骸の中に蹲
うずくま
っている人間を見た。檜皮色
ひわだいろ
の着物を着た、背の低い、痩

せた、白髪頭
しらがあたま
の、猿のような老婆である。その老婆は、右の手に火をともした松の木片
きぎれ
を持って、その死骸の一つの顔を覗きこむように眺めていた。髪の毛の長い所を見ると、多分女の死骸であろう。
 下人は、六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、暫時
ざんじ
は呼吸
いき
をするのさえ忘れていた。旧記の記者の語を借りれば、「頭身
とうしん
の毛も太る」ように感じたのである。すると老婆は、松の木片を、床板の間に挿して、それから、今まで眺めていた死骸の首に両手をかけると、丁度、猿の親が猿の子の虱
しらみ
をとるように、その長い髪の毛を一本ずつ抜きはじめた。髪は手に従って抜けるらしい。
 その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。そうして、それと同時に、この老婆に対するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。――いや、この老婆に対すると云っては、語弊
ごへい
があるかも知れない。むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。この時、誰かがこの下人に、さっき門の下でこの男が考えていた、饑死
うえじに
をするか盗人
ぬすびと
になるかと云う問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、饑死を選んだ事であろう。それほど、この男の悪を憎む心は、老婆の床に挿した松の木片
きぎれ
のように、勢いよく燃え上り出していたのである。
 下人には、勿論、何故老婆が死人の髪の毛を抜くかわからなかった。従って、合理的には、それを善悪のいずれに片づけてよいか知らなかった。しかし下人にとっては、この雨の夜に、この羅生門の上で、死人の髪の毛を抜くと云う事が、それだけで既に許すべからざる悪であった。勿論、下人は、さっきまで自分が、盗人になる気でいた事なぞは、とうに忘れていたのである。
 そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、梯子から上へ飛び上った。そうして聖柄
ひじりづか
の太刀に手をかけながら、大股に老婆の前へ歩みよった。老婆が驚いたのは云うまでもない。
 老婆は、一目下人を見ると、まるで弩
いしゆみ
にでも弾
はじ
かれたように、飛び上った。
「おのれ、どこへ行く。」
 下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞
ふさ
いで、こう罵
ののし
った。老婆は、それでも下人をつきのけて行こうとする。下人はまた、それを行かすまいとして、押しもどす。二人は死骸の中で、しばらく、無言のまま、つかみ合った。しかし勝敗は、はじめからわかっている。下人はとうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへ

じ倒した。丁度、鶏
にわとり
の脚のような、骨と皮ばかりの腕である。
「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。」
 下人は、老婆をつき放すと、いきなり、太刀の鞘
さや
を払って、白い鋼
はがね
の色をその眼の前へつきつけた。けれども、老婆は黙っている。両手をわなわなふるわせて、肩で息を切りながら、眼を、眼球
めだま

まぶた
の外へ出そうになるほど、見開いて、唖のように執拗
しゅうね
く黙っている。これを見ると、下人は始めて明白にこの老婆の生死が、全然、自分の意志に支配されていると云う事を意識した。そうしてこの意識は、今までけわしく燃えていた憎悪の心を、いつの間にか冷ましてしまった。後
あと
に残ったのは、ただ、ある仕事をして、それが円満に成就した時の、安らかな得意と満足とがあるばかりである。そこで、下人は、老婆を見下しながら、少し声を柔らげてこう云った。
「己
おれ
は検非違使
けびいし
の庁の役人などではない。今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。だからお前に縄
なわ
をかけて、どうしようと云うような事はない。ただ、今時分この門の上で、何をして居たのだか、それを己に話しさえすればいいのだ。」
 すると、老婆は、見開いていた眼を、一層大きくして、じっとその下人の顔を見守った。
まぶた
の赤くなった、肉食鳥のような、鋭い眼で見たのである。それから、皺で、ほとんど、鼻と一つになった唇を、何か物でも噛んでいるように動かした。細い喉で、尖った喉仏
のどぼとけ
の動いているのが見える。その時、その喉から、鴉
からす
の啼くような声が、喘
あえ
ぎ喘ぎ、下人の耳へ伝わって来た。
「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘
かずら
にしようと思うたのじゃ。」
 下人は、老婆の答が存外、平凡なのに失望した。そうして失望すると同時に、また前の憎悪が、冷やかな侮蔑
ぶべつ
と一しょに、心の中へはいって来た。すると、その気色
けしき
が、先方へも通じたのであろう。老婆は、片手に、まだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、蟇
ひき
のつぶやくような声で、口ごもりながら、こんな事を云った。
「成程な、死人
しびと
の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう悪い事かも知れぬ。じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸
しすん
ばかりずつに切って干したのを、干魚
ほしうお
だと云うて、太刀帯
たてわき
の陣へ売りに往

んだわ。疫病
えやみ
にかかって死ななんだら、今でも売りに往んでいた事であろ。それもよ、この女の売る干魚は、味がよいと云うて、太刀帯どもが、欠かさず菜料
さいりよう
に買っていたそうな。わしは、この女のした事が悪いとは思うていぬ。せねば、饑死をするのじゃて、仕方がなくした事であろ。されば、今また、わしのしていた事も悪い事とは思わぬぞよ。これとてもやはりせねば、饑死をするじゃて、仕方がなくする事じゃわいの。じゃて、その仕方がない事を、よく知っていたこの女は、大方わしのする事も大目に見てくれるであろ。」
 老婆は、大体こんな意味の事を云った。
 下人は、太刀を鞘
さや
におさめて、その太刀の柄
つか
を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。勿論、右の手では、赤く頬に膿を持った大きな面皰
にきび
を気にしながら、聞いているのである。しかし、これを聞いている中に、下人の心には、ある勇気が生まれて来た。それは、さっき門の下で、この男には欠けていた勇気である。そうして、またさっきこの門の上へ上って、この老婆を捕えた時の勇気とは、全然、反対な方向に動こうとする勇気である。下人は、饑死をするか盗人になるかに、迷わなかったばかりではない。その時のこの男の心もちから云えば、饑死などと云う事は、ほとんど、考える事さえ出来ないほど、意識の外に追い出されていた。
「きっと、そうか。」
 老婆の話が完
おわ
ると、下人は嘲
あざけ
るような声で念を押した。そうして、一足前へ出ると、不意に右の手を面皰
にきび
から離して、老婆の襟上
えりがみ
をつかみながら、噛みつくようにこう云った。
「では、己
おれ
が引剥
ひはぎ
をしようと恨むまいな。己もそうしなければ、饑死をする体なのだ。」
 下人は、すばやく、老婆の着物を剥ぎとった。それから、足にしがみつこうとする老婆を、手荒く死骸の上へ蹴倒した。梯子の口までは、僅に五歩を数えるばかりである。下人は、剥ぎとった檜皮色
ひわだいろ
の着物をわきにかかえて、またたく間に急な梯子を夜の底へかけ下りた。
 しばらく、死んだように倒れていた老婆が、死骸の中から、その裸の体を起したのは、それから間もなくの事である。老婆はつぶやくような、うめくような声を立てながら、まだ燃えている火の光をたよりに、梯子の口まで、這って行った。そうして、そこから、短い白髪
しらが
を倒
さかさま
にして、門の下を覗きこんだ。外には、ただ、黒洞々
こくとうとう
たる夜があるばかりである。
 下人の行方
ゆくえ
は、誰も知らない。


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